☆ 3月も中旬を過ぎました。。。

☆ 一昨日と一昨昨日の母は覚醒も良く食事も自ら摂れていました。
昨日は目が開かず、介助での昼食でした。

大分 暖かくなってきましたね。
今週もガンバです!!

母親の短歌集を紹介しますね。
()内は今回作成した短歌集のページです。


雨上がりの武蔵野陵にぬかづけば北山杉の緑目にしむ

玉砂利を踏みつつ進む御陵に人間天皇しのび心ふるへり

咲き誇る南国の花鮮らけき日本の冬を離れ来たりて

雲海の水平線に夕日落ち色濃き茜飛機に見てをり
H6年4月
(1)
待ちわびる桜前線予想報に心ほのぼのなぜか浮き来る

ギリギリと螺子巻きてゐしはいつも亡父黒く光りて掛時計時告ぐ

引出しの底より出でし封筒はカタカナまじる亡母よりのもの

古手紙絆纏取りに出向けよと綿入れて待つと亡母の面顕つ
H6年5月
(2)
久々に声なつかしき幼友全盲と聞けば言葉とぎるる

幼友全盲となりしを電話にて明るく語るも心の底は

失明の友を見舞ひし庭先にほころび初めて匂ふ老梅

見えぬ瞳を尚見開きて思ひ出を語る仕草に幼日しのぶ
H6年6月
(3)
うっすらと弥生の庭に芽吹き初むるクロッカスに雪やはらかに降る

窓越しの銀に輝く常念岳を朝な夕なに座し見る幸福

枯芝に藍ちりばめし犬のふぐり忙しき吾に春を告げをり

おだやかにうすら陽のもと雪柳はつかな風に華やぎを増す
H6年7月
(4)
吾が活けし新年の花ほめくれし亡父を想ひつつ若松を買ふ

遠住みの女孫は入学心待ち弾むその声机届くと

朝毎に白木蓮の咲き初むを仰ぎ見る庭に春の陽をどる

菜の花を両手に一杯持ち帰り差し出す夫は少年の顔
H6年8月
(5)
はらからと海外旅行は珍道中行く先々に思ひ出づくり

台北の旅より帰りし十日後に飛行機の惨事心身こほる

汗ばみて上衣ぬぎ捨てブラウスで晩秋の南紀旅は楽しき

しなやかに心に残る阿寒湖の底に息づくマリモよ毬藻
H6年9月
(6)
今年また見事に咲き満つる大手毬苗くれし人の面影を追ふ

吾が好む色合の服選びしか赤き花添へし嫁のこころ根

朝夕の一時間余りを野良仕事初めて鍬ふる息子夫婦も

幼日に登りし黐の木幹たけて古里の庭に遠き風聞く

菜の花を両手に一杯持ち帰り差し出す夫は少年の顔
H6年10月
(7)
梅雨晴れの白樺すがし山の湯にうら哀しくも郭公の鳴く

静もれる湯宿の椅子に身をゆだねまどろみて聞く夏蝉の声

ジェット化でざわめきてをりエアポート姉と旅立たん福岡一番機

「どちらから」「信州松本」「あっサリンの」言葉とぎるる長崎の旅に
H6年11月
(8)
息子の案内で沢蟹あまた捕り来たり興奮しきり都会の孫は

下げ帰る沢蟹元気とテレホンで餌やり水替へ二ヶ月過ぐと

コスモスの色やはらかに陽と遊ぶ保育園庭のそこに風立つ

朝光に湖岸のななかまど輝きて摩周の湖は神秘増したり

吾が好む色合の服選びしか赤き花添へし嫁のこころ根
H6年12月
(9)
初日の出きれいだったと厨より清々しもよ嫁の声する

年毎に亡き母に似るはらからと久しく会ひて別れ難くをり

アカシアのほのかな香は思ひ出のはるけき恋を呼びて漂ふ

刈り終へし稲田の上を悠然と時折鳴くは夫婦の鳶か
H7年1月
(10)
公園の芝先なべて露宿し宝石のごと朝の光に

長兄帰らず慟哭の日々の亡父母を杳く想ひき平和なる今

燃えたてる紅葉に会ふは小春日の今日を来たれる上高地なり

瞬くに陽は沈むなり秋の一日惜しみつつ過ぐる山の湯宿に
H7年2月
(11)
はるばると秋の宮島尋ぬれば波にゆれゐる赤き大鳥居

いにしへは海底ならむと伝へらるファンタティックな秋吉台は

中国路浪漫紀行としゃれこめば時折目にとむ白き山茶花

錦帯橋見事な作りさすがなり木の温もりの柔らかくあり
H7年3月
(12)
吟行会友の運転慎重なり「シートベルト」と後座の者にも

吟行会須坂へ向ふ山並は空暗けれど紅葉鮮らし

短歌道の歌碑に詠みある「ガンダム」は何の意味かと幼居ぬ友は

房総路菜の花に見紛ふ帰化草に憂愁の声車内に満つる
H7年4月
(13)
被災地に嫁ぎ居る姪は如何なるや通じぬ電話に焦り苛立つ

ガラス戸に形美しき氷紋よエアコンスイッチ押すを躊躇ふ

如月のぬくき陽差しを背に受けて書類作りも捗る今朝は

細雪いつしか止みて青く澄む春を装ふ昼月の空
H7年5月
(14)
息子の声に何事ならむと出で見れば虹色の細氷朝光に舞ふ

戸をくれば狭庭に瞬時ダイヤモンドダスト暫しを嫁と見とれぬ

福寿草によく似し蕾の鉢植を買ひ求めしがその名忘れき

珍しき鉢植なりと買ひ求め日毎ふくらみ黄の花咲けり
H7年6月
(15)
朝の陽に木の間にきらら浮遊せる一期一会のダイヤモンドダスト

梅の木にりんご丸ごと差し置けば鵙や鵯の寄りて賑はふ

玻璃越しにりんご啄む小鳥等のしぐさに朝の光躍れり

庭先の梅に飛び来るつがひ鳥ほころび初めし花散らすまじ
H7年7月
(16)
戸をくれば狭庭に瞬時ダイヤモンドダスト暫しを嫁と見とれぬ

年毎に株の増し来て楚楚と咲く狭庭辺灯す一人静は

一輪草一人静や錠草の苗をくれたる人の偲ばる

球根より育みて来しアマリリス真白と深紅を窓辺に飾る

吾が畑の間近に見ゆる城山の山桜白々朝の陽に輝る
H7年8月
(17)
テレビ切り短歌詩くれば時刻む音にまじりて田蛙の声

押花の講座受けし処女作をきれいきれいと嫁のほめくるる

草花をあまた摘み来て押花にせよと急かせる夫と息子は

道の端に咲きゐる草花の目に止まり押花画材にと歩めば楽し
H7年9月
(18)
うら若き新入社員にと旅先でコスモス絵柄の扇子求めき

色白の彼の女はアップがよく似合ひ項の遅れ毛ゆれて眩し

みづみづしき乙女と机並べゐて青春期と言ふが吾にもありし

うつむける碇草の花の紫を見つむる辺り紋白蝶舞ひたつ
H7年10月
(19)
霧ヶ峰のニッコウキスゲの群生を驚嘆しつつ歌友と歩めり

群なせる日光黄菅に寄りそへるフウロの紫が楚々として好き

さわやかに鴬、郭公、時鳥、時を告げ鳴く吾が家の時計は

隣家の主婦は余儀なく入院を朝な夕なの厨気になる
H7年11月
(20)
十五夜の月に会ひたく外に立てば幽かに明るむ雲の上なる

今宵こそ十六夜月を拝まむと狭庭にしばし立てどむなしも

今年より敬老会の招待を受けたる夫の複雑な顔

現役で職場に励む夫なれば開封せぬ儘の敬老会招待状
H7年12月
(21)
花の時短けれども金木犀家うちまでも匂ひただよふ

黄金色に稔れる稲穂は首たれて風道みせて波のうねれる

小雨降る白馬村なるジャンプ台気合ひ諸共選手飛び来る

雄大なる冬期五輪のジャンプ台若き等つぎつぎ鳥の如舞ふ
H8年1月
(22)
戦時下に御租等纏ひし裃で服作りしを今にして悔ゆる

花びらに水玉模様の鉢植は友より賜ひしホトトギスとふ

子の飼へる色とりどりの淡水魚今宵も見入る一人の時間

風呂上がり子が買ひくれしマッサージ器に身を委ねつつ居眠るしばし
H8年2月
(23)
若松を活くる習慣吾なりに新年迎ふる区切りとなせり

夢に見し竹富の浜にうずくまり一期なるか星の砂を拾へり
 
安曇野の休耕田に秋そばは葉月の風に白く波うつ

羽衣の伝説名高き松原に天女の姿想ひ砂ふむ
H8年3月
(24)
真青な師走の空に凛冽の雪をまとへるアルプスを愛す

銀嶺を茜に染めし落日のうるはしき故かややに佗しき

車庫のなき嫁の車に送られて徐々に解けゆく霜を見つむる

遠く住む姉に送りし野沢菜漬が「とっても美味しい」と声高の電話
H8年4月
(25)
厳冬から真夏の国へ降り立ちて友等と探しぬ南十字星

オーストラリア初体験の馬の背に乗れど鐙に吾が足とどかず

此の国は至る処に禁煙マーク道路も公園も塵一つなし

ヘリコプター一期一会と童女にかへる友等もはしゃぐ遊覧飛行に
H8年5月
(26)
プランターに昨秋植ゑたるチューリップ今朝芽吹き初む弥生の雨に

遠住の友に賜ひし雪柳きびしき冬にも耐へて根付けや

童謡を愛する会あり月一度歌ふは楽し故郷偲びて

社員旅行今年は欠席とポツリ言ひ青年は父の入院を告げぬ
H8年6月
(27)
七十路にて再就職をされしとは彼女の意欲に吾も発奮す

老恩師の携へ呉るる文集に小学一年生の私がそこに

土筆とふ六十年経たる文集は何にも勝る宝となさむ

剪定の枝捨てきれず投げ活けし白木蓮はほころび初めり
H8年7月
(28)
吉野山桜めで来て京の宿舞子も色そへ宴盛り上がる

うとましき陰口などは鳴き鳥と明日香の里に捨てて帰りき

桜舞ふ鴨川べりを人力車紺の前掛けの茶髪の青年

垣根内にタラの木一本植ゑをけば頃合ひ見ては食卓賑はす
H8年8月
(29)
をちこちに白や紫の花菖蒲畦草除きて花壇となりぬ

空と海金色に染めてグアムの陽はロマンを秘めて今し沈める

残雪の未だに多き湯の宿よ鶯の声に今朝も目覚むる

水無月と云へるに山の桜花しばし見とれぬ小谷の山峡
H8年9月
(30)
残雪の解け初むあたり黄の色の蕗の薹つむ山の湯に来て

よどみなく雪解の水が道の端をちろろ音立て山の春告ぐ

音のなき世界かと紛ふ山の宿鶯の透る清しさにをり

人生は旅にしあれば片道の切符大事に楽しく行かむ
H8年10月
(31)
遣り場なき心の葛藤続きしが咲き盛る合歓に解ぐるる思ひ

納得の行かぬを抱き寝ねがたく神にまかせて今宵は眠らむ

吾の手にて丹精こめし風船葛小さき緑のふうせん揺るる

去年の夏姉に賜ひし朝顔の大輪夢みて種を播きやる
H8年11月
(32)
紙上にて恩師の訃報に目をとめぬ凛たる姿顕たしむ

今年又賀状に無事を確かめしが恩師の訃報は唐突なりき

聞き覚えなき虫の音はチリチリと夜毎樹上に鳴き続けをり

チリチリと樹上に鳴ける虫の名はヤブキリなると知識者言へり

よどみなく雪解の水が道の端をちろろ音立て山の春告ぐ
H8年12月
(33)
木蓮の枝にからみて返り咲くてっせん愛し秋冷の庭

昨年の十六夜月は雲の中旅来て拝す今宵娘の庭

夫と子が今宵は会合たまさかと嫁を伴なひステーキの店

友達に戴きし花木の根づきゐて春秋の季夢あふれさす
H9年1月
(34)
木蓮の枝にからみて返り咲くてっせん愛し秋冷の庭

昨年の十六夜月は雲の中旅来て拝す今宵娘の庭

歌友等との木曽路の旅は楽しかり紅葉、碧空、蕎麦と御嶽

青く澄む巴ヶ淵を見下ろせば水に髪すく美女のまぼろし
H9年2月
(35)
夫と子が今宵は会合たまさかと嫁を伴ひステーキの店

友どちに賜ひし花木の根づきゐて春秋の季ゆめあふれさす

霜枯れて飾れる花のなき季にカサブランカの鉢植賜ふ

カサブランカ清楚な白と艶やかさ賜ひし人の笑顔重ねて
H9年3月
(36)
年の瀬の迫れる挨拶交はしつつ諸事の合間に黒き豆煮る

いつ開くや固い蕾の梅盆栽新春元旦吾が家にひらけ

「冬至」とふ梅の盆栽ホツホツと春を呼ぶがに三輪咲けり

好奇心旺盛なる吾が友を誘ひ歌舞伎公演のチケット求めき
H9年4月
(37)
餌箱にひまはりの種や傷りんご何時やらに野鳥の啄みし跡が

甲高き鵯の声に目が覚めぬ静寂破るは仲間呼ぶらし

餌箱に雪除け用にと古傘を取り付けたる日鳥は遠巻き

此の叔母が最後の葬りぞ亡き叔父伯母の若き笑顔の顕ちて雪野に
H9年5月
(38)
柏木の枯葉二枚が木に在りて細かくゆれて耐へてゐるがに

時折の夢に出で来る君なれど吾のみ老いし悔しさにをり

庭木々を手入れ怠り伸び放題挙げ句の果てはシルバーセンターへ

景品に携帯電話を戴きし夫使ひこなせず引出しの奥
H9年6月
(39)
十数年前旅にて求めし八重咲きの椿は早春の庭に燃え立つ

八重咲きの椿陽をため燃え立てり此の身ひと日を共にもえなむ

ペンペン草小さき花の白くゆれ内耳になるは津軽三味線

餌箱に初めて来にし野鳥あり玻璃越しに見る朝の楽しみ
H9年7月
(40)
ふる里の庭に咲きゐし鯛釣草懐かしき人に会ひたる思ひす

園芸店の鯛釣草に目が止まり躊躇はずして求め帰りき

歌友等とマレットゴルフは楽しかり玉を打つたび笑声上げて

点数を破棄せしマレットに時忘れ身も心をもリフレッシュせり
H9年8月
(41)
午前四時友の誘ひに便乗しお数珠戴く夢かなへむと

善光寺 戸隠中社 奥社参り、夫病む足腰給へと

雪解けの真清水流るる戸隠の道端に二輪車奥社へ続く

新緑のブナの大樹に木洩れ日は目映ゆく返し鶯の鳴く
H9年9月
(42)
雪解けの真清水流るる戸隠の道端に二輪車奥社へつづく

新緑のブナの大樹に木洩れ陽はまばゆく返し鶯の鳴く

砂塵かと紛ふ種蒔き虞美人草色とりどりに咲きて初夏

いつからか温泉めぐりは年二回姉妹の話題は亡父母とふる里
H9年10月
(43)
帰り道あの雲何に見えますか「俺は鬼だな」「私は怪獣」

二人して他愛なき事あれこれと語らずとも良し心通へば

真夜中に急ブレーキ音に目が覚めぬ昼夜の別なき交通地獄は

今朝も又朝顔に止まる飴色のとんぼ掌に留めゆるり庭掃く
H9年11月
(44)
花も樹も大地も共に待ち待ちてこがれゐし慈雨二日間降れる

盆明けと共に虫の音聞ゆるはそこはかとなく秋の気配か

よさこいの踊りに打ち込む若き等の熱気に観集手拍子弾む(高知)

歌友等と出湯の里に短歌会終りて品よき料理とカラオケ
H9年12月
(45)
病院の減塩食を不満気に醤油たのむと夫の電話は

段階をふみての治療も効果なく夫は決断手術となれり

入院中の夫の布団の冷えたれば残暑の日差し集め温むる

吾が畑の空地に群れなすコスモスは色を盛り上げ嬉々とし揺らぐ
H10年1月
(46)
退院の夫の為にと赤飯を嫁のやさしき心根うれし

夫退院息子の発声で乾杯し二ヶ月ぶりの華やぐ夕餉

蜻蛉追ふ幼等の姿浮かべつつ昔を偲ぶ夕焼け小焼け

門柱の左右に掛けしペチュニアは咲き次ぎにけりこぼれんばかり
H10年2月
(47)
散り残る桜もみぢを愛でにつつ友等と語らひマレット楽しむ

散り敷ける桜紅葉の極まりに踏めるは惜しと避けて通り来

読経続く葬場内に君が顕ち数珠を持つ手のかそかに震ふ

ありし日の君を偲びて囁ける人等も吾もすでに夢なり
H10年3月
(48)
読経続く葬場内に君が顕ち数珠を持つ手のかそかに震ふ

ありし日の君を偲びて囁ける人等も吾もすでに夢なり

君生れしは昨日のごとく隣家の長男の華燭を共に祝はむ

暖冬の窓辺に咲ける大文字草うすくれなゐの光に安らぐ
H10年4月
(49)
歳末は春の花ばな芽吹きしに百年来の雪の盛り山

大雪の降りたる庭に毅然とし木瓜の蕾のみ紅々と映ゆ

暖冬と言はれてゐしが大寒波椿の蕾も固く閉ざして

相聞歌を得意としたる君ゆゑに次回はいづれ天にぞ聞かむ
H10年5月
(50)
春風に誘はれしごと群をなし野猿ぬくぬくと団栗食みをり

常念岳の寒の茜のみごとさを子にせかされて見つむ声なく

病み上がりの夫の笑ひの声あらずせめてカラカラ笑はむ吾は

去年の春枝を払ひし白木蓮残りし枝々に春の膨らむ

テレホンで娘はしみじみと思春期の男孫の躾の難しさ言ふ
H10年6月
(51)
黄の色は春一番に咲き出でぬ山ぐみ咲きて祭り近づく

魁けて春を歌へよ山茱萸と連翹黄色に明るくてあれば

ケセラセラとは行かぬものかと不況風只に冷たし桜花充つるに

平安宮色濃き桜のしだれ咲く神苑めぐり一日安らぐ
H10年7月
(52)
見さくれば飛騨の桜は今盛り忙しき吾は今日を清々

霧にけむる飛騨の旅路の道すがら色濃き桜にひととき憩ふ

一株の忘れな草を求めたり恃まむ心に小花群れ咲け

通ひなれし隣の茶房壊されて縁なき社屋の建ちて寒々
H10年8月
(53)
早苗田になりしか夜毎を風にのり蛙のコーラス湯船にとどく

朝々の道辺の草花かをる風腰の万歩計かたこと唄ふ

公私とも憂きこと多きが続きたり膝頭ポンとキーボードの変換

紫の手毬はずむがに「アリウム」よ五月の風に無限の愛しみ
H10年9月
(54)
瑞々と気高きまでの夏椿そなたの傍らひっそり歩まむ

清純な乙女のおもかげ夏椿万緑の中花の浮き立つ

ふんはりと姿のままに落ちし沙羅ガラスの器に浮かべ友呼ぶ

ハングライダーで全身重傷の大学生癒ゆれば再び空を飛ぶとは
H10年10月
(55)
空梅雨に朝やりし水の途切れしか鉢花なべて俯く夕べ

秋桜と向日葵の競ひ咲くなれば異常気象か文月半ばを

南方に戦死せる兄は二十九歳愚戦終れる一ヶ月前を

子を持ちて亡父母の嘆きを推し測る戦死公報の届きし日巡る
H10年11月
(56)
ご飯粒ひとつでも拾ひ食せよと亡父母の躾と飽食の今を…

咲き継ぎし色とりどりの朝顔は尚蕾もち天空まさぐる

子の飼へる数多の鈴虫夜を徹し生命の唄と呼ぶが愛しき

難病と戦ひながらも二人の少女笑顔で合唱「旅立ちの歌」

野ぼたんの散りしばかりを押花に紫色の古里しのび
H10年12月
(57)
馨しき香り幽けき麦畑亡父母と手刈りし猛暑なつかし

十年間花咲き実りし小梅の木一夜の颱風に余すなく折らる

夫癒えてネクタイ姿も一年ぶり出で行く肩にやさしき秋の陽

古稀迎へ「二萬五千五百余日」喜怒哀楽の来し方おもふ

召されしと出で征く兄に千人針ひと針の折り虎に託せり
H11年1月
(58)
何鳥やガラス戸にしてくっきりとぶつかりし跡胸毛残して

一人居の友を見舞ひて帰り来ぬ家族に日々を囲まるる吾は

障子貼る亡父の手伝ひはいつも吾こだはりの技今も手にあり

貼り終へし居間の障子の清々と青める白さに心遊ばす

優勝のゴール目指してひた走る襷を継ぐ若さ頼もし
H11年2月
(59)
有田焼きの風鈴箱に納めんと目つむれば姉との九州路顕つ

名は知れど花知らざりき雪割草花を夢見て温き窓辺へ

遠住みの娘夫婦が古希祝ひあでやかに匂ふピンクの胡蝶蘭

発車ベル別れ惜しみて泣きし児も背丈豊かに笑顔で「バイバイ」

帰路につく時間の不定が幸ひし今し昇れる満月に遭ふ
H11年3月
(60)
冬空に昇り初めたる満月は鴇色にしてゆらめきてゐる

常念岳より弧をなし伸ぶる白雲は巨大な箒のひと筆画きや

蒼穹を切り裂く如く巨大なる弧をなす雲に不吉よぎれる

風鈴を箱より出だすは楽しくてすでに納むと白き此の風

孫の飼ふ太っちょ金魚はゆうらりと家族の行動日がな見てゐる
H11年4月
(61)
自主的に塵焼却炉を撤去せしが意外と溜る紙くづの量

岳下ろし轟々と看板ゆすり行く空青くして大寒今日は

高熱の幼を抱きておろおろと診察待ちゐる若き父親

招待も恒例となりし観劇会新春を飾る「沢口靖子」よ

心打つ命の賛歌「蔵」に見る一途に駆けゆく盲の乙女は

安曇野の名水ボトルを土産にと背負ひて帰る都会の孫は
H11年5月
(62)
偶然に見上げし金星近々と寄り添ふ星を子と立ちて見つ

煌めきて宵に寄り添ふ星二つ再びの逢ひ思ひ巡らす

やうやくに花芽覗きぬ福寿草「元旦草」とふに如月半ば

冬となり屋内に入れしアブチロン花灯す日待ち佗ぶる弥生

赤・白の南天いつしか小鳥等に啄まれしや残り実まばら
H11年6月
(63)
丹精せし金の成る木に花咲けり白き小花が上向き群るる

赤、白、ピンク枝垂れし梅の見事さを八重咲き継木只に見詰むる

春色のセーターまとひ同窓会懐かしき声顔そのままに古希

若き日の思ひ出として秘め置くは遠き光の花うるはしき

遠き日に失ひしものセピア色夢に真実は渦巻くなれど
H11年7月
(64)
昨秋に取り残したる野沢菜が生命の花をみごと咲かせり

菜の花や連翹・山茱萸・雪柳光たをやか春を唄へり

やうやくに訪れ来たる無言館今を立ちたり深き悲しみ

還らざる事を知りてか恋人のモデルつとめし乙女の心はや

画学生の未完の筆跡見つつあれば征きて帰らぬ兄の佇ち来ぬ
H11年8月
(65)
カリヨンより童謡流れほのぼのと幼に還る晋平記念館

新緑の北信の里に眺めたる一際うるはし妙高山よ

信濃なる山国よりぞ出で来たり一斉に声上ぐる上越の海に

母の日と子が買ひくれしワープロ機エラーの連続に格闘の日々

新設の温水プールの広告を外孫に送るラーラ松本

峡深き湯宿に集ひしはらからのなべては亡父と亡母に似て来ぬ
H11年9月
(66)
八重一重命を彩るひなげしの白一段と吾にぞ映ゆる

たった今羽化せしものか梅雨晴れ間紋白蝶のふんはりゆらり

はらからの集ひ来たれる七年ぶり笑ひと涙の一夜なりけり

廻り道一途と来たる初夏の季一年ぶりの沙羅よ愛しき

ラズベリー刺ある蔓を絡めむと触るれば若実の数多つきゐて
H11年10月
(67)
枯れ松に絡み昇りし凌霄花色濃く炎と庭に咲きつぐ

薔薇に棘、樹液に毒の凌霄花その性なるや花はくれなゐ

友よりの木槿は八重咲きピンクなりひと日の命朱夏に咲き継ぐ

からたちも山椒の葉も橘も食み尽したり揚羽の幼虫

軽やかに舞ひ立ちゆける黒や黄の揚羽の蝶よ季移りゆく
H11年11月
(68)
此の春に孵りし無数の鈴虫よ内の一つが初鳴きて処暑

仰ぎ見る白の木槿は朝日受け吾の迷ひをふるひ立たせり

玲瓏たる空の朝のむくげ花憂ひも悩みも吹き消えて白

朝夕の涼しくなりし部屋の隅所在なしげな扇風機ポツリ

枕辺に香草入りの袋置くアロマセラピーは安眠療法として
H11年12月
(69)
老人と認めたくなき吾のゐて鏡は時折他人の面輪

秋海棠、秋明菊に安らげり虚構は過ぎし数ある日々を

残り日を休まず啾ける鈴虫よ霖雨続ける神無月真夜を

台湾を日本統治の良き時代懐かしみたる義姉は居ませず

兄嫁の居ませば台湾大地震五体崩るるや故郷の惨状
H12年1月
(70)
駒ヶ岳ロープウェイは三時間待ち長蛇の列とバスのひしめく

穂高連峰そそり立つ峯々バックにし納まる友等にシャッター切らるる

槍ヶ岳奥穂に眞向ひやがて来る白銀厳しき日も近からむ

常念岳初冠雪にしろがねの光放てり秋の陽の中

ふりむけば二人歩みし山坂や四十数年ゆめのごとしも
H12年2月
(71)
強霜に音立てて散れる木蓮の潔よさあり悩み消えゆく

コース覆ふ枯葉の中にまぎれ込み友を悩ます黄色きボール(マレット)

セピア色の風が揺すれるゑのころ草過ぎ来て尾花の吾が散歩道

心病む人等の多き世にかあらむ弱きに付け込む邪宗のいくつ

瀬戸内の橋をいくつも渡り来てその一つ一つが異なる美観

真向へる店に来客ある度に車の明り吾が家を射貫く
H12年3月
(72)
それぞれの岐路を歩みし幾春秋追憶も夢かはるか初恋

銀嶺に傾き初めし満月と雲とを染めて朝日昇り来

犀川の無数の鴨や小白鳥に驚嘆と笑顔の都会の女孫

幸せはここに有りしか二千年ともあれ無事に吾等二人の

をさな児の事件の多き此の頃は世相狂ひし世をば憂ふる

白銀の山嶺と雲を朱に染めて今し落ち行く大き太陽
H12年4月
(73)
言ひやうで角が立つ時立たぬ時言葉選べと亡母の面たつ

睦月とふにぽかぽか陽気の河川敷マレットゴルフ今日も賑はふ

タクシーの運転手さんは羨めり年金と暇ある今の年寄りを

リストラに会ひて咄嗟の食ひ継ぎはタクシーぐらひと低く呟く

短歌会の時間まちがへ二往復これも惚けかと自ら笑へり

惚け等は忙しき吾には無縁よと思ひてをれど今日の失態
H12年5月
(74)
暮れなづむ空に茜の飛行機雲いつしか銀嶺に吸ひ込まれゆく

茜色に長く伸び行く飛行機雲渋滞も信号待ちもゆとりの車に

久々に歯科医の窓越し馴染みたる欅大樹の枝すべて切らるる

枝切られし欅の大樹に寄りて来る野鳥の群れの唯戸惑ふか

事務所内の緊張ほぐるる一瞬よメロディーロックに小さくハミング
H12年6月
(75)
雪消えて庭辺は春の香の満てり紅梅ながむる朝々にして

疵りんご庭木に差して小鳥待つ吾がなししを今年は嫁が

高校の合格なせる外孫は友を伴ひ「あづさ」で着けり

時つぐる松本手毬の絡繰り時計偶然に鳴り出で歩を止め仰ぎぬ

歳古れば鼻血ぐらゐと侮れぬ出血とまらず救急車で夫は

幼なじみ全盲となりしを電話にて明るく語るも心の内側は
H12年7月
(76)
古賀メロディ「影を慕ひて」は今も尚彷彿として美空ひばりよ

早苗月田植まぢかと田起しのエンジンの音朝のしじまを

をちこちに田植準備の水鏡目立ち初めたり心浮き来る

麗しの白木蓮も終りあり生ある花びら掬ひてぞ見る

入院の友を見舞ひて零したる涙想ひて一夜眠れず

顔色もよし「日進月歩の医療の今あせらず頑張れ」と友を励ます
H12年8月
(77)
バスに見る千曲の流れ穏やかに白々と光かへしてゐたり

をちこちに菜の花黄みだれ北信濃高野記念館に〈春が来た〉唄ふ

スクリーンの緑ゆたけき〈故郷〉のメロディに合はせ涙の合唱

ことごとく枝打ちされし欅なれ天空めがけ緑ふきあぐ

顧みる激動の日々や戦中戦後〈みどりか昭和か〉四月二十九日

久々に来しコンサート会場紫陽花のホットコーヒー心むらさき
H12年9月
(78)
癌精検必要ありの報とどく梅雨の欝々晴れて夏至なり

梅雨晴れ間畑を藜が占拠せり杳き日懐かし胡麻和への味

不審げに吾の手元を覗きつつ「アカザってなあに」町育ちの嫁

夢に見し雪の大壁室堂よ二人で交互に記念撮影す

魚津なる銘石岩風呂に壁面風呂湯上がりに優し日本海の風

蛍追ひクワガタ等を見せ合ひて自然と遊びし幼日の顕つ
H12年10月
(79)
賑はひしバブル景気のネオン街 花の金曜日消えて久しき

けがれなき眼画ける〈ちひろ館〉十七歳の少年を思ひき

兄弟会恒例となりぬ今年また会ふを待たるる年古れば尚

待ち待ちてはらから集へる日となりて遠住む姉の入院の報せ

皆既月食見逃すまいと落ち着かず戸外に立てば満月のドラマ

今世紀最後のショーと皆既月食神秘なる瞬間此の目で確かむ
H12年11月
(80)
鮮やかに紫紺に野牡丹咲き出づるすでにアブチロン色競ふなか

暁暗を異常の音に目覚めたり雀脅しのロケット花火

十月に華燭の典を上げるとぞ社員はこの頃妖艶さ増せり

披露宴の晴れ着に合はせ帯選ぶ時刻を忘れて嫁と語らふ

今年また数多を孵化せる鈴虫よ競ひ鳴きをり残暑の夜を

寿招待状まだ見ぬ人の面輪など想像も楽し甥の婚近し
H12年12月
(81)
こぼれしを知らず育ちし風船かづらまろき風船そよ風に揺るる

風船かづら高きに程よく絡まりて秋日に揺るるを窓越しにして

吾が一代に家の新築二度までもゆめゆめ思はざり秋の陽明るし

救急車隣家に突然止まりたり手当も空し十七歳の娘よ

女子高校生いぢめに耐へかね死の旅へやり切れぬ思ひ吾も親なり

知事選後の亀裂が走るをちこちに後味の悪さ報道に見る
H13年1月
(82)
としなみに遠近乱視と調整の眼鏡いつしか体の一部
H13年2月
(83)
左手に深く食い込む指輪なれ魔除けとなれよ今しばらくを
H13年3月
(84)
入院の姉を見舞へり一回り小さくなりしと涙おさへぬ

娘三人すべて嫁がせ病床の姉はしきりに故郷恋ひぬ

新世紀と豊川稲荷へ初詣で諸事万端の祈りはかたし

バスに見る夜明けの朱色すがすがし東名高速の赤き山茶花

新築中の家浮きたたせ上弦の月も冴えたり完成間近
H13年4月
(85)
わらび採り茸とりしは夢となる開発すすみ家々の建つ

懐かしき眼鏡は真ん丸黒ぶちと今や大小赤やむらさき

宝石箱あくれば指輪の何れにも他国の思ひ出たたせ燦めく

飛機の窓に偶然出会ひたるオーロラよ脳裏に強き二人の思ひ出

同居せる嫁の緊急入院と吾が家の四輪なぜか軋みぬ
H13年5月
(86)
「やくそくね」小ちゃな小指からませし二人の吾子も不惑を越えぬ

残り雪夜来の雨に消え去れば待ち望むがに水仙の黄芽が

山茱萸の蕾ふっくら黄色おび彼岸と言ふに霙降りつむ

人間ドック受けて此の身の疑ひと再検査の文字に眠れぬ幾夜

新築の成りていよいよ引越しと然れど気分と腰の重さよ

娘の嫁しし後は飾らずお雛様捨てる能はず又もや新居へ
H13年6月
(87)
八重椿莟ふっくら口紅をさして春日に華やぎ揺るる

引っ越しと衣類の始末に戦中育ち塵の袋へ躊躇ひ入れる

蚕飼ひして嫁入り道具と支度せし父母を偲びて捨て切れずをり

枝打ちの白木蓮を水切りしほころび初むを近隣へ配る

新築の巡りに移植の花や木々生命守れと祈り深けれ
H13年7月
(88)
職ひきて虚ろな日々を花木等は芽吹き咲き継ぎ励ましくるる

新築後初めて訪れし娘の家族部屋を巡るや笑声にぎはし

吾が庭のミルキーウェイが耳にする山帽子なるを知らず十年

移植後を諸枝芽吹きて糸紅葉転居の窓越しに柔らにゆるる

幼日に飽かず眺めしつばくらめ巣作り子育て吾が家も欲しき
H13年8月
(89)
雨のなき六月の夕暮日課なる移植の木々に水まき二ヶ月

城山の空に大小の鳶の群れ「天気が変る」と亡父の言ひしが

漸くに雷雨来たりて潤ひし吾のめぐりも緑ふかまる

新生姜この時季のみの漬物と友に習ひて甘酢に漬け込む

夫退院と酸素吸入の余儀なくて日常生活は吾も手助け
H13年9月
(90)
真夜中を胸の痛みに目が覚めぬ頭をよぎる吾の家系よ

開院を待ちわび主治医の診察とやはり的中狭心症と

生来が言葉少なき夫なるに病重なり頓に笑みなくて

青々と株間を埋めてそよぐ稲「笹竹わけて」と友の電話は

家の巡り草取り終えて腰のばす神秘な夕焼け瞬時を惜しみ
H13年10月
(91)
真向へる山ふところの蝉しぐれ細波のごと風に乗り来る

雨もなく今日も猛暑の続くなり水やりも空し枯れし庭木よ

朝顔の緑のすだれに涼を呼ぶせめて酷暑の気分やはらぐ

二十二時ときを忘れて満月と心かよはす無なる情緒に

かねてより望みし花苗頂きて蕾と夢の日毎ふくらむ
H13年11月
(92)
奈良井川の側道散歩は日課なり片足立ちの白鷺いく羽

引っ越しし荷物の隅に今宵また鈴虫いくつ涼やかに鳴く

色づきし稲穂ゆらして行く風にいつしか秋の訪れ知りぬ

長月となりて一雨きし後を肌さむきなど酷暑なつかし

コスモスの揺るるにとんぼ折々を短く過ぐる信濃の夏は
H13年12月
(93)
息子の飼へる鈴虫の音のやや減りて深まる秋の足音を聞く

素直なる今日の一日と思ひつつ言葉の綾取りやんはり返す

今朝も又つがひにあらむ白鷺よ山をバックに舞ふを見てゐる

やうやくに芽吹き伸びゐし枇杷の苗嫁との笑顔秋の陽の中

金木犀散りての後も花型をとどめて薫り吾が喉かわく
H14年1月
(94)
山際に虹ほんのりと古里の安曇野に立つ暫し刻の間

とをかん夜戦場なる兄の誕生日と陰膳の餅 忍ぶ亡父母

ぺったりと地べたに座り物を食み歩きながらの携帯電話は

紙上にてマイホームレス、チャイルドの記事読み終へて自国を憂ふ

霜降るに毅然と咲ける麦藁菊きりきりと蒼き天に向きゐつ
H14年2月
(95)
笊いっぱい山茱萸の実を子と摘めり薬酒の出来栄え時折覗く

山ぐみの薬効友よりファックスで種々の効能に夫の微笑む

霜降れど毅然と咲ける麦藁菊きりきりと蒼き天に向きゐつ

強霜にめげずに今も花手毬むらさき一輪師走の庭に

電話にてデイセンターの楽しさを詳細語る一人居の友
H14年3月
(96)
明け初めしアメジスト色の中天に見事に細き鎌月の輝く

庭の木に林檎さし置き小鳥待つ朝の日溜まり夫と見てをり

去年の春移植せし椿は数多なる莟つけゐて光をはじく

娘の家族帰りて四人に戻りたり今日七草と静もる卓は

凍みよけと部屋ぬちに置く植木鉢床暖房に青々と伸ぶ
H14年4月
(97)
「鬼は外」子の大声に吾が父の笑顔のたちきぬ今日は命日

囲炉裏火や煎り豆の香り節分は亡父母や兄弟たたせ懐かし

公立大と入試迫れる隣家の二階の一部屋深夜も灯せり

誕生日プレゼントなる子と嫁の年月古きオルゴール鳴らす

枕辺に好みを変へてオルゴール時折聞きて夜を癒せり
H14年5月
(98)
職去りて空白の多き予定表にこの頃目立つ病院の予約

日脚のび雪の斑に春の花芽吹き初めゐて吾を励ます

枯れたると諦めゐたる木瓜なるに若芽や蕾の付きし昂ぶり

落葉樹の多き向ひの山にして芽吹き初むるを心待ちをり

山頂の樹間に透ける白壁は緑茂れるまでの山荘
H14年6月
(99)
物置に遮られゐし山茱萸よ陽の燦々と移植し足らふ

小白鳥に続き発ちしや北に向け姿を見せぬ白鷺の群れ

処々に立つ外灯のひかり吾が家を包みてやんはり春の曙

恒例の旅行出欠を迷ひしが家族が強く背を押しくれぬ

春休みと男孫は単独に突と来て山葵と野沢菜リュックに帰りぬ
H14年7月
(100)
伝統なる鳥居火祭と氏子等は闇夜の山に炎の鳥居を

鳥居火祭子も初参加と松明かかげ五百余年の春告げ祭

連休に女孫来たりて華やげり新緑の中風きりドライブ

みどり湖の湖畔に群れなす水芭蕉盛り過ぎれど気品残れり

雉鳩は番を呼びて鳴きし後撒き餌ついばむ卯月の和み
H14年8月
(101)
みづみづと白き花房アカシアに心よりゆく遥かなる青春

久方ぶり火の色に燃ゆる空仰ぐ暮れて寂しや母の命日

七十路の半ばを過ぐる夫にして涙もろさよテレビドラマに

新生姜も小梅大梅つけ終へて大小の甕を眺め安堵す

勤め終へ特老ホームの一日を嫁の語らひ関心持ち聞く
H14年9月
(102)
裏庭に続く農家の減反畑帰化たんぽぽの花園と化せり

たんぽぽはあっと言う間に白色一ふはりふはりと恐怖の冠毛

梅雨の晴れ間たんぽぽ草取り合戦に奇麗と眺めし心うらはら

何となく心にぼんと穴のあくやうなる文月師の入院は

生来の丈夫を過信し手遅れと約束も空し義妹は逝けり
H14年10月
(103)
百日紅は猛暑の庭に咲き盛る長野県知事選挙渾沌として

此の夏も大輪の朝顔咲かせむとネットを張れば屋根へ咲き継ぐ

猛暑続き二百十日も事無くて庭木や花の水撒き続く

恒例の新作花火大会よ美と技の競演は湖上を染めぬ

斬新な発想と技との新作花火空と湖とに心揺さぶる
H14年11月
(104)
環境度の善し悪しを知るや移植せし柘榴の花の今年の実り

幾とせを実を付けざりし柘榴なり転居の庭に赤々実る

待ち待てる兄弟会の迫れるに病みゐる姉のいかにと案ずる

兄弟会すでにし父母は在さねども車に過ぐる故郷なつかし

白馬なるホテルに集ひしはらからよ無事を確かめ掌を握りあふ
H14年12月
(105)
折々を義兄の待ちゐる病院へ三才山トンネル越えて見舞へり

手を貸して脳梗塞と声失せし義兄のリハビリ歩行に涙す

いつ知らず声の絶えたる鈴虫は雌のみ二匹ただに動かず

庭隅の松の根方に秋明菊華麗にゆるるを秋のひととき

秋冷えの朝日にきらら花水木赤実と紅葉この世を遊ぶ
H15年1月
(106)
たわわにも残る柿の実を眺めつつ皮剥き干しし少女期ありき

刈り終へし落ち穂に群がる雀等の数の多さにシャッターを押せり

末枯れたる花々刈りて落ち葉掃き雪近き庭に葉牡丹を植うる

公園の紅葉燃えゐて見どころと垣なす満天星に秋の陽そそぐ

この冬の積雪印すと人の指す蟷螂の巣は吾の背を越す
H15年2月
(107)
びつしりと赤実つけたる白水木に番の小鳥今日も通ひ来

雪の庭に華やぎ添へし赤実なり小鳥啄み残り実まばら

炬燵にて満月仰ぐ年の瀬よ穏やかな日々長くぞあれよ

北側の陽光届かぬひとところ玻璃戸の芸術今日も美し

遠山に雪雲ひくく垂れ込めり日毎数増す白鷺の群
H15年3月
(108)
久々にデゴイチ来ると窓に寄る郷愁ふかき幼日の汽笛

デゴイチの雄姿撮らむと高架橋はレンズの数多ずらり並ぶも

人垣の透き間に写せるデゴイチを鉄道マニアの孫に送らむ

早番と嫁の勤務は特老ホーム中天の鎌月皎々と照る

特老ホーム早番遅番嫁にして虎落の笛を聞きて出で行く
H15年4月
(109)
縁ありて金婚となると春秋の思ひ出いくつ語る日だまり

房総の土産に頂く切り花を水上げなせば馥郁とかをる

摘み取りて届け呉れたるなづななり土の香と春の息吹を

今年又梅の収穫願ひつつ剪定の音天空に響かす

昨秋に歌友に頂く球根のクロッカス芽吹きて花待つ日々を
H15年5月
(110)
小白鳥の旅立ち遅るる報道に見守る人等みな寡黙なり

小白鳥は青空と雪の常念岳 犀川ダム湖を旅立ち急げり

「コーッコーッ」と数百羽を越す小白鳥別離のエレジー響く河岸

善光寺回向柱に押されつつ念じたる事は昨日の夢か

紅梅の咲き盛るなりみづからの色に酔ひたる陽の降る中を
H15年6月
(111)
買ひ出しも医院通ひも夫の運転酸素を助手席に吾は後部席

運転免許書き替へ講習無事済ます夫よ長くあれゴールドキップ

親友等の誘ひにて来し温泉郷日帰りなれど心うきくる

安曇野は一足遅れの桜満開道草も楽しフラワーショップ

梅の花春一番に散りゆきて万蝶舞ふがに花水木咲く
H15年7月
(112)
鬼無里なる雪解の水の溢れ行く八十万本水芭蕉咲く

喘ぎ来て鬼無里のさとの水芭蕉ブナの大樹の木漏れ陽の中

新築の祝を家族で積み込みて娘の家へと高速道行く

家族談義やうやく決まり貰ひ猫チロとクロとに癒されてをり

笑ひ声の久しぶりなり無口なりし夫は二匹の小猫と語る
H15年8月
(113)
庭の木々職人に依頼し剪定せり洩れくる光急に明るむ

職人に刈り込みされしレッドロビン梅雨の晴れ間の夕日に燃ゆる

「うた草を拾ひに行こう」歌友の声皆一様に歓声あげぬ

美しの高原はつつじ今盛りなだり一面色濃くもゆる

ゆつたりと放牧牛は草を食む下界の喧噪ここに届かず
H15年9月
(114)
金婚と佳き日選びて子供等は諏訪の出湯に文月集へり

孫子等と幾年ぶりか白鳥船 梅雨の晴れ間を諏訪湖に遊ぶ

母の日のプレゼントなる胡蝶蘭ふた月過ぐるも花の未だに

二鉢の白とピンクの胡蝶蘭心やすらぎ家ぬち灯せり

早朝の散歩が常の今朝の道薮に投棄の自転車ぬれて
H15年10月
(115)
長引ける梅雨に冷夏の盆となるされど真中に冷雨降りつぐ

陽が差せば一気に鳴き出す蝉の声向ひ山より短き夏を

盆休み雨の降る日は温水プールわんさ押しかけ立ちて泳げり

猫好きの親子帰省せる部屋隅にエノコロ草と子猫眠れる

清々と畔草枯れるその中に禊萩ひと株むらさきこぼす
H15年11月
(116)
哀愁の音色とひびき胸を打つ二胡コンサートの「蘇州夜曲」に

小白鳥冬の使者とも訪れて今朝うつすらと常念に雪

向ひ山の紅葉綾なすを朝夕に眺め語らふ家居の夫と

朝霧の晴れて木曽路の全山は紅葉なだれてひとひの幸と

木曽谷の紅葉もとめて朝を来ぬ碧天は高く陽の照る中を
H16年1月
(117)
落葉の日毎に進む庭隅に鬼灯のみが赤極まれり

青春の竹槍訓練の明け暮れを偲べば近し十二月八日

二十年サンタクロースの寿司店長児童施設の奉仕光れり

取り込みし鉢物数多その中の吾の背を越すトランペット満開

生涯に行列の出来るラーメン屋 望み叶へり喜多方の町に
H16年2月
(118)
過去二度のオペの経験は外科なりき眼となれば懼るる師走

眼の手術医者に委せて俎板の鯉とはなれど時刻の長さよ

目の手術やさしく無痛に終りたり現代医術の進歩に驚嘆

晴天の続ける正月孫等来て二人の部屋に弾ける笑ひ

三ヶ日終れば疲れが足腰に整形外科へとやをら行くなり
H16年3月
(119)
大寒入り此の冬一番の寒気とぞ野沢菜づけの薄氷割りて

シンビジューム薄紅に咲き継げば給ふ友等の笑顔たたせて

様々の旅を重ねて三十余年今尚つづく友ある幸せ

厳冬の白鷺の群れを窓越しに塒へ急ぐ夕焼けの中

陸自本隊サマワ派遣を決定と友好の証となるや口髭
H16年4月
(120)
薮入りの出店に求めし福だるま招き猫今年 金の色とし

取り込みし木瓜は八重なり咲き初むるうす桃色は遠き日の色

今年又ふるさとの友逝く中に思ひ出深き人の面輪は

水戸梅園白梅紅梅三千本と馥郁かをる園内めぐれり

旅の帰路茜に染むる水平線上瞬時出逢ひし日没のドラマ
H16年5月
(121)
長病める友精根の和紙人形十種を越ゆるを送り給へり

手作りと思へぬ見事な和紙人形古き時代の妖艶うつして

同窓会友の電話は「大雪降り」と早速冬着に替へ故郷へ

同窓会面輪さまざま腰曲がり銀髪もありぬ手を握り合ふ

うらうらと日和続きに綻べる桜に今日の名残り雪舞ふ
H16年6月
(122)
車椅子媼は一心リハビリかそつと添へたき吾の手ひとつ

院内を行きつ戻りつ車椅子媼の姿斯くして吾とや

陽光に紅白二本の花水木苞葉をひろげ光華やぐ

裏庭に遊べる雉鳩を家猫は悔しげに睨む玻瑠戸のありて

住みなれしが移転なしたるその場所に中華飯店と様変りせり
H16年7月
(123)
年々をこぼれし種の千鳥草蕗畑占めて紫ほこれり

カモミール乾燥なししを枕辺に腰痛忘ると置きて眠らむ

決断し入院されよと嫁言ふが吾の心底躊躇の腰痛

嫁は勤め吾が入院は残りたる家事の出来ない男の二人

窓越しの麦秋の黄金風あれば漣なして寄りて来たれる
H16年8月
(124)
腰痛と検査入院朝と夕二回の点滴二週間すぐる

正常な点滴ならぬ呼吸困難狭心症のナース泣かせや

安曇野の中心病院山並の見えず病棟に梅雨空見つむ

病室の人等はなべて安曇野そだち幼日の遊び訛りも嬉し

最上階の壁面に赤き十字マーク曇空なれど只に明るし
H16年9月
(125)
雨のなき炎熱なれど庭の隅ピンクかかげて百日紅咲く

朝夕の花木に水やる夫の日課凌霄花命燃やしむ

庇越す朝顔の緑子の丹精すだれなしつつ花を咲かしむ

腰痛に動けぬ窓に今年又ヘブンリーブルーの朝顔ゆるる

腰痛と病院通ひもままならず家族に感謝しすでに立秋
H16年10月
(126)
青春の思ひ出にがき戦中と今日も炎暑の八月十五日

減反の麦刈り済みしと思ふ間も気付けば既に秋そばそよげり

腰痛の様々治療も効あらず最後の手段と医師冷静に

脊椎手術近づく日々の胸中を庭の花々に癒されてをり

友よりのトランペットの花咲けり吾の心にピンク広げて
H16年11月
(127)
物置の陰にし合歓のそよぎゐむ腰痛に臥し花見ぬ淋しさは

ピンクなる八重咲き木槿咲きたりと腰病む吾に夫は一枝を

夕迫る病棟屋上の鳩の群れ祭り花火の音に飛び立つ

病院の三色お萩の昼食膳はつと気付けり彼岸中日と

退院と赤飯炊きて待ちくれし眼裏あつし嫁のこころ根
H16年12月
(128)
退院し半年ぶりの散歩なり立冬の田園は寂静なりし

彼方此方の田圃の蕎麦は草まみれ刈る気配なし冬も間近き

向ひ山の碧空と紅葉の見事さを眺めつつ語る山の怖さも

顔よせて夜毎訪る猫のチロ吾になつきて温き布圃へ

無理矢理に猫を抱き行く夫なるに瞬時逃げくる吾のふところへ
H17年1月
(129)
退院の吾を待ちゐしや義兄逝けり腰のコルセット喪服で覆ひて

入退院繰り返しゐし義兄逝けり遺影の笑みは亡義姉と語るがに

銀杏並木子に誘はれて夫と来ぬ黄葉を包む秋の陽燦々

拾ひ来し銀杏もみぢの数枚を押し葉の重しに広辞苑を置く

霜月の観葉植物多き部屋シクラメンの真紅めぐりを灯す
H17年2月
(130)
年末の片づけ終り一息と広ぐる朝刊に冬陽のまぶし

リビングの中程に届く冬至の陽の強さに驚きカーテンを引く

一年の事を仕果たす師走なれ此の身に雪の深々降れり

紅白の南天選びて若松に添へて活くれば匂ふ正月

正月の庭木に霧氷の美はしと声上げ見つむる都会の孫は
H17年3月
(131)
年明けの好天選びてうぶすなへ広き境内すがすが歩めり

初詣お守り破魔矢に福鈴と願ひを託せる今年の幸を

限りある赤実を啄む野鳥等はやがてを梅の蕾に集ふ

春立てば日毎に陽射しの強まりて山茱萸の蕾ややに膨らむ

昨春を友に頂くシンビジューム越年したれば白咲き初むる
H17年4月
(132)
掻き寄せし雪のやうやく消えたるに蕗の薹に又名残り雪降る

窓近く日向に寝そべる家の猫虫を見つけて本性あらはに

いづくより這ひ出しならむ小さき蜘蛛猫より奪ひて外へ逃がせり

今宵又電話の主は故郷の同窓会へと親友等のさそひ

年々を同窓会員減少し記念の写真が如実に語れる
H17年5月
(133)
紅梅のほつほつ咲ける今朝の窓音なく銀糸の雨の降り出づ

枝垂れ桃の枝に無数の銀の玉朝陽を返す瞬時のドラマ

室内は春の花々咲き盛る薫りに咽るは羽衣ジャスミン

又一人病みゐし友の身罷りを紙上に知りて暗き幾日よ

外孫の運転免許を取得とや「おめでたう」の後に無事故を祈れる
H17年6月
(134)
川ぞひの桜並木の満開と散歩も楽し歩を止め仰げり

子の植ゑし三色八重咲き枝垂れ桃めでる季節の巡りきて嬉し

みどり湖の出店に求めし翁草株の増し来て今年も咲けり

風に乗り鶯の声聞ゆると庭へ出て聞く夫と並びて

メニエール病右に左に激しく目眩まなこ閉ぢても家ごと回る
H17年7月
(135)
向ひ山の日毎に新緑深みゆき白々群れなすアカシアの花は

風に乗りアカシアの花粉舞ひてきぬ庭も車も黄色くなりて

日毎なる凶悪ニュースの辟易を窓辺に泳ぐ金魚に癒さる

今年又家族揃ひて娘の家へ関越道ドライブ楽しみて行く

久方ぶり郭公の声に出会ひたり歩みを留めて暫し聞き入る
H17年8月
(136)
むし暑く長きひと日の夏至の夕べ異様な色の雲と太陽

メニエールの治まるは恒例日帰りの友等との旅行がストレス解消か

ラベンダー園紫陽花列車の窓に見る慈雨を待ちゐる喘ぐ花々

実家守る義姉の逝きたる水無月を新宅の実兄も倒れ旅立つ

雨欲しと天に叫びて農の兄炎暑の畑に倒れ言絶つ
H17年9月
(137)
体調の不良にこの頃もの忘れ多くなりしを笑ひてをりぬ

もの忘れ夫も共々と気遣へど吾が仕舞ひたるをひと日探せり

梅雨あけを知りたるものか合歓の花あるか無しかの風にそよげる

むくげ花ひと日の命惜しみなく黒土に散れど満開の今朝を

庭先の枯れたる花木に凌霽花いのち逞し燃え昇りゆく
H17年10月
(138)
二階より夜通しにして鈴虫の澄みたる声は交配故か

耳遠くなりたる吾を気づかひて息子は鈴虫を階下へ移せり

処暑も過ぎ気づけば最早二百十日散歩の肌にも初秋の風が

二鉢のアメリカ芙蓉も秋となり白とピンクの大輪咲きつぐ

一日の花とし思へば芙蓉花美しき故に去り難く佇つ
H17年11月
(139)
早朝のウォーキングコースの道の辺に古き時代の道祖神御座します

道祖神にどなたが供へしか今朝も又色とりどりの季節の花が

おだやかに村を見守る夫婦神歩みを止めて今朝も合掌す

神無月吾が誕生の月にして秋の花々庭にゆれゐる

秋そばや黄金波うつ稲刈りも済みたる田圃に雀群がる
H17年12月
(140)
姫小松の根方が適所か大文字草紅白の二色満開となりぬ

大文字草の花をしみじみ眺めをり居間の窓辺の明るみて足らふ

歩く事日課となして今朝望む蒼天にそびゆる雪のアルプス

向ひ山と庭の花水木紅葉して石榴の数多真赤に爆ぜり

青春の思ひ出残し君逝けり空行く雲に笑顔うかべて
H18年1月
(141)
須原宿 昔を偲べる軒並や生活の名残り水舟とひしゃく

尋ね来し県歌の一節園原へ晴天に恵まれ紅葉楽しむ

高原のロープウェイは富士見台へ青空と紅葉の園原にして

十五年経て昼神に宿すなり朝市も又思ひ出を呼ぶ

初雪の便りと共に窓に見る北より帰りし白鷺の群れ
H18年2月
(142)
明けやらぬ凍てつく窓に利鎌月青く光れる雪なき師走

此の冬は暖冬予報でありたれど子は備へあればと除雪機を買ふ

新品の除雪機届き軒先に出番を待てど粉雪舞ふのみ

庭先のイルミネーション此の冬も細やかなれどほのぼの吾が家

遠住みの女孫来たれば年頭の神社参詣を家族と共に
H18年3月
(143)
小白鳥の越冬飛来は過去最高の二千羽越すとテレビに見入る

観光の目玉となれる犀川のダム湖はバスとマイカーに埋まる

外孫の帰りて四人に戻りたり嫁の作れる七草粥は

わづかにも日脚の伸びて節分と紅梅のつぼみ色づき初めぬ

吉田兄弟三味線コンサートラスト曲のじよんがら節に拍手の嵐
H18年4月
(144)
啓蟄と言ふも未だに風寒く炬燵へ籠るを医師に諭さる

家ぬちの花々淋しくなりたると家族と出向く園芸店へ

店内に一際目立つ黄金色その名を問へば彗星蘭とぞ

あれこれと家族の好める花々を求めし車内は春の香満つる

黄の花は幸運を呼ぶとぞ玄関に彗星蘭を置きて足らへり
H18年5月
(145)
彼岸の声やうやく聞きて雨音の待ちゐし如く水仙つのぐむ

初曾孫の誕生待ちて焦がれしに対面は遺影と義姉の春彼岸

彼岸明け庭の山茱萸は黄を盛りて春先駆けの生命思へり

紅梅も連翹も又此の春を遅れじと競ひ陽に耀へり

いつ知らず水木の花芽ふくらめり春の陽の照る中に佇む
H18年6月
(146)
遥かなる思ひ出いくつ呼びさますセピア色なる修学旅行写真

石炭の黒煙と匂ひで汽車に酔ひ先生と二人の修学旅行は

蚕飼ひして箪笥いつぱい持たせくれし父母を偲びて防虫剤置く

木々あまた芽吹きの季よ風の緑ミニひまはりも満開の笑み

徒に時の流れの早き思ひあれこれ思ふも手付かずにゐる
H18年8月
(147)
兄一周忌法要の儀式も無事終り山の湯宿で偲びつつ盃を

山深き湯宿の窓を見下ろせば群なし咲ける都忘れは

吾が庭の今を盛りのラベンダー旅に愛でたる北の野をしのぶ

紫陽花の花より淡き思ひ出を残して友は逝きてしまへり

決断のつかざる故に失ひし夢なり今も尾を引きてをり
H18年9月
(148)
向ひ山みどり黒々盛り上がり災害聞く度梅雨の続けば

今年又いつもの如くメニエール病長梅雨の間を耳鼻科通ひす

南方の島に消えたる長兄よ又近づきぬ終戦記念日

年毎の日記帳に印す赤丸は父母兄姉の命日にして

咲き盛る時季を過ぎたる残り花色香あせれど存在感しめす
H18年10月
(149)
庭先の鉢花終末を迎へしが衰へ見せぬは凌霄花

裏庭に白々咲きたる山法師気づけば早も散りて仕舞ひぬ

歯科医院の中庭に咲ける夏椿一年ぶりと花を愛でをり

昨年は咲かず仕舞ひの百日紅今年見事に花房盛りあぐ

テレホンで突然聞かるる郵便番号「三九〇のあれっ」私とうとう?
H18年11月
(150)
遠住みの娘家族と上高地長年の望み果して安堵す

曇天を気遣ひたれど晴れ渡り河童橋には人波つづく

三連休を外孫共々上高地疲れ取らむと乗鞍の湯宿

鈴虫の鳴けるがめつきり数減りて部屋隅にして声の寂しむ

悠仁様のお印となりし高野槙庭に佇み愛もて眺むる
H18年12月
(151)
ざくろ赤実木に残りたる秋なりき雨後のあしたに数へて立てり

花壇なるハイビスカスの燃ゆる赤を取り込みし後の咲きつぐピンクは

バイオリン高嶋ちさ子のコンサート秋の一夜を夢心地なり

バイオリンとチェロにピアノの生演奏第一人者の芸を堪能す

名古屋なる姉を見舞ひし帰路にして今宵十三夜皎々の道づれ
H19年1月
(152)
名古屋へと病み伏す姉を見舞ひしが喜びの声唯にかぼそし

脳梗塞で伏して数年入退院健康でありし姉別人の面輪

車に一杯姉の好める故郷の土産にあれど歓喜の声なし

此の冬のツリーの色はブルーとてセロハン紙求め子は巻きしとふ

夕食後ブルーと変りしツリーなり子の苦心作庭木に映ゆる
H19年2月
(153)
安曇野の大イルミネーション観賞へ家族と共に師走の一夜

上弦の月を愛でつつ安曇野の電飾公園へ夜道を急ぐ

土曜日をイルミネーションをと皆同様道路渋滞駐車場満杯

此の冬も暖冬であれと祈りつつ雪なき師走と新年待たるる

都会子の女孫の望みはスキー場へと恐さ知らずの二十歳の挑みは
H19年3月
(154)
もみぢ葉も末枯れとなりし向ひ山初雪被りて吾に迫れる

吾を呼ぶ嫁の声せる外に出づる雪の北アルプス染むる落日

嫁と佇ちきれいきれいと叫びつつ申し合す如入り陽拝めり

熟れ柿を庭枝に差せば野鳥等の寄りて来たるを睨む家猫

野鳥等の柿をむさぼる終日を暇な夫とも見入る冬庭
H19年4月
(155)
大寒と言へども今年の温暖化日毎福寿草ふくらみて来ぬ

年毎に株を増したる福寿草春先駆けの庭辺灯せり

立春も過ぎて晴天続きをり休日家族といちご狩りせり

初めての権兵衛トンネル通りつつ友の歌をば口遊みをり

目的は伊那のみはらしファームにて真赤に熟れたるハウスの苺
H19年5月
(156)
畔一面犬のふぐりの群れ咲くを季逃さじと心待ちゐつ

暖冬の故か蕗の薹知らぬ間に花咲き終へり吾のめぐりの

紅梅の満開となり花明りやよひの庭を灯す暁闇

穏やかに迎へし春の夢やぶり能登の地震の信じ難かり

県議選市議会選と熱を帯び訪問やテレホンに辟易して居り
H19年6月
(157)
木の芽風花を広ぐる花水木枝をゆらして日毎に華やぐ

花桃の満開すぎしを春の風庭に誘ひてピンク一面に

今年又隣家へつばめ来たりけり巣作り始むるや鳴き声明るし

早朝をゴールデンウィークと娘の家へ岩の妙義山仰ぎ愛でつつ

娘の庭へ我が家の花木や山野草株分け植ゑる孫等の喚声
H19年7月
(158)
大声で人目気にせず笑ひこけ友等とひと日きみまろ公演

春は花家の巡りを黄に染むるは風が運びしアカシアの花粉

もの忘れ頓に多くなりたるは先刻言ひたる人や花の名

年毎に好奇心薄らぎさりとても冒険も出来ず日々の過ぎゆく

花好きは吾に似たるや息子の笑顔鉢花すでに百個を越えしと
H19年8月
(159)
山法師今年は特に花多く朝の光に白じろ揺るる

朝夕の歩行続けよと促す子吾を呼びゐる風と知れども

親つばめ雨降る中も小鳥待つ励む姿の煌めきやまず

恵まるる現世にあるに幼児ポスト虚しく非情と愛を憂ふる

安曇野の湯宿に遊ぶ兄弟会料理の幾皿手つかず終宴
H19年9月
(160)
入道雲茜に染めて湧き上がる梅雨の明くると只に眺めり

メニエル病二年ぶりにて発症し明り遮断の二週間を伏す

メニエル病入梅時季に多発とか点滴の患者にベッドの埋まる

脳の活性と切り絵細工の一式を老いの二人へ子が買ひくれぬ

スリランカの子供の友人二十年ぶり家族伴ひ来訪に湧く
H19年10月
(161)
子の声で眠り覚され庭に出づあれよあれもと流星群は

ペルセウス流星群を観逃さじ青く尾を引く瞬時のいくつ

室内に飼育をしたる鈴虫を松の根方に放つとふ息子は

声高に夜を通して鈴虫は秋明菊の花陰に鳴く

窓に見る皆既月食に出会ひしは生ある証の幸と感動
H19年11月
(162)
をちこちにコスモスの種がこぼれしか秋の庭辺の色どりやさし

連休を娘の家族来訪に二匹の猫のおびえ出で来ず

チロとクロ二階へ逃げて押入へ女孫見つけしと笑みて告げくる

坐骨神経痛と夫下半身の激痛にもだえ苦しみひと月を経ぬ

突然の激痛の叫びかたはらで痛み分け得ぬ悔しさにをり
H19年12月
(163)
痛みをれば金木犀の香りにも漸く気付けど早散り始む

秋霖の続けばコスモス散り果てぬされど黄菊の鮮鮮として

花水木の赤実熟れしを椋鳥の日毎数増し食べ尽したり

空と雲秋めく中の向ひ山紅葉増し来ぬ十月尽に

夫も又吾も共々様々の病かかへて病院巡る
H20年1月
(164)
凍て空に廊下に取り込む鉢の数花好き家族の因果応報か

取り込みしシャコバサボテン既にしてうす紅色に枝垂れ咲き満つ

掘り出しし紅梅も春を待たずして咲き初めにけり部屋の片隅

右足の激痛に悩みし夫なりきディサービス通ひに痛み吹き飛ぶ

腰痛に牽引療法続けをり医師の勧めに隅日通院す
H20年2月
(165)
初春の日差し眩い部屋にして白梅・紅梅の鉢植ゑ真盛りなり

ぬくぬくと床暖房の部屋に住めば散歩の風は肌に痛しも

腰痛と整体通ひの帰路のみを散歩と決めて二ヶ月の過ぐ

冬日には寒風除けなるマスクせり眼鏡の曇り歩みつつ拭く

戦争もテロも無き世を願ひつつ初日に向ひ両手合せり
H20年3月
(166)
母親の短歌 | コメント:(12) | トラックバック:(0) | 2014/03/17 08:08
コメント:
No title
(* ^-^)ノこんばんわ♪

お疲れ様でした!

お母様の短歌の数々、とても素晴らしいです。

Re: No title
百千華さん♪

☆ 今晩は。お疲れ様。
日中は暖かくなりましたね。
明日は寒の戻りか。お天気は崩れるとか。
母親の短歌は一日1ページを投稿しようと思いましたが
一挙に投稿しちゃいました。
コメント 有難う。v-410
心和みます
素晴らしい句の数々、感性豊かで優しいお母様なのですね
ご主人様を詠まれた句、ご兄弟やご家族を思った句、素晴らしいです
細やかな愛情をそこ此処に感じます
akiさん、この親にしてこの子あり、ですね、素敵です
親孝行をなさいましたね、私の心まで温かくなりました、ありがとうございます。
Re: 心和みます
チャメ婆さん♪

☆ 今晩は。お疲れ様です。
コメント有難うございました。
本当は一日、1ページの投稿と思っていましたが
一気に投稿しちゃいました。
短歌の上手か下手かは解りませんが
多くの作品を残してくれたことに感謝しています。
No title
こんにちは☆

お母様の短歌どれもステキですね。
とても一気には読めないので、情景を思い浮かべながら毎日少しずつ読ませていただいています。

少しずつ暖かくなってきました。
春の花の季節になったら、また新作もできるかもしれませんね。

Re: No title
静華麗さん♪

☆ こんにちは。
雨降りの中、昼食の母親の介助をしてから
大町病院に入院している母親の姉(叔母)さんの見舞いに行ってきました。
松本からは車で片道約一時間程度でしょうか。
帰りに虹を見たよ。
母親は きっと もう短歌は作れないと思います。
短歌を作っていた最後の年には 億劫になっちゃっていましたからね。
それでも 春の花の季節になったら少しだけ期待してみようかな。。。(笑)
No title
お母さんを取り巻く景色が色鮮やかに見えますね

ご主人 息子さん 娘さん お嫁さん お孫さんと亡きお兄さん 亡きご両親

あき坊さんのお母さんのファンが急増しますよ(笑)
Re: No title
かぜにはるるさん♪

☆ こんにちは。コメント有難う。
15年間の長きに渡り 色々な作品を残してくれたので
本にして残しても良いかな...
なんて考えて身内だけに配りました。
本人も病室に一冊 置いてあるので覚醒の良い時には読んでいます。
No title
いつの間に~
放置ブログの方に、ブックマークしてるのだけど、
放置ブログゆえ?
訪問遅れました~(笑)

パソコン来たらゆっくり味わいたいです\(//∇//)\
スマホ画面は、見にくくてね~(汗)
Re: No title
カーサン4452さん♪

☆ こんにちは。朝は氷点下3.7℃で冷え込みましたが
日中はグングンと気温上昇で12.3℃。暖かくなりました。
新しいパソコンが来たら楽しんで下さいね。
No title
まだまだ、全部読めてましぇ~んw
また、じっくり。。とねw

でも、
お母様の人生をちょっと、垣間見た感じ^^
錦帯橋や宮島の鳥居を見る気分も、
今後はちょっと変わってくるかも。。しれましぇん( *´艸`)
Re: No title
カーサン4452さん♪

☆ おはようございます。
母親の短歌は15年分だからボリューム有るかも...
コメント有難う。

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